地に落ちた柔道精神 / ロンドンオリンピックの柔道競技に思う。
今回のロンドンオリンピックの柔道競技の試合姿勢、判定等を見ていて「柔よく剛を制す!」「正々堂々」という日本柔道の根本精神が失われ、「剛よく柔を制す。」或いは「賄よく利を制す。」に変わってしまったのではと情けなく思っているのは私だけであろうか?




相手に袖や襟を掴ませないレスリングみたいな組み方、力で押し切る技、痛めた関節を集中的に攻撃する姿勢、明らかに対戦相手に不利となる袖の短い柔道着の着用、明らかに何かがある不自然、不可解な判定等々、数えればきりがない柔道競技の実態である。
本家日本柔道連盟の講道館柔道の精神を訴える力が弱くなったとしか思えない。柔道が単なる武道競技になってしまった感がする。
私は海上自衛隊OBであり、護衛艦乗りであったことから世界の多くの国を訪問する機会があった。外国訪問時は高校時代から柔道を行っていたこともあり、多くの国の柔道場を訪問し交流に努めた。
特に印象に残っているのは昭和53年、私が砕氷艦「ふじ」の航海士として南極支援行動に参加しての帰途にモーリシャス共和国に寄港した際、艦を訪れた一人の若い柔道家と知り合い、寄港中に3回ほど彼の柔道場を訪問して展示や乱取等を行った。
日本に留学したこともない若い柔道家が柔道用語の正確な発音はもとよりその意味、本質を理解し、特に「礼」と「技」を重視して門下生に教えていたことは今でも強烈な印象として残っている。彼は日本柔道そのものを追及しており技にもきれがあり強かった。
講道館の嘉納治五郎師範は柔道の世界への普及に尽力され有能な柔道家を世界各国へ派遣され柔道の啓蒙に務められた。
これに一役買ったのが海軍であった。毎年行われる練習艦隊の遠洋練習航海には、各海兵団選りすぐりの柔道部員を乗艦させ、これに兵学校出身の若手将校、少尉候補生を合わせ海外寄港地で柔道の演武を行った。(参照:海軍柔道の歴史)
海上自衛隊もそうであるが柔道、剣道、水泳は日本海軍の必須科目であり、日本海軍の伝統を受け継ぎ遠洋練習航海等で外国を訪問する機会には必ず柔道、剣道の展示及び訪問地の道場等での練習試合や指導を行っている。
講道館の嘉納治五郎師範は、昭和13年にエジプトのカイロで開かれた国際オリンピック委員会に日本代表委員として出席され1940年第12回オリンピック競技大会の東京招致を勝ち取られたが、その帰路の5月4日急性肺炎により氷川丸船上で不帰の客となられた。
時に師範79歳。この後講道館では財部大将が館長代行となり、8ヶ月後の12月講道館の経営委員会である維持会は師範の甥である海軍少将南郷次郎を第2代講道館長に推挙している。
このように海軍と講道館との関係は、その創設以来切っても切れない深い縁で結ばれていた。
そして戦後の復興を経て、1964年に東京オリンピックが開催され、この時に柔道が初めてオリンピック種目となった。次回の68年のメキシコオリンピックでは採用されなかったが72年のミュンヘンオリンピックで復活して現在に至っている。
メダルを賭けて競うオリンピック競技種目としての柔道は勝つことを第一とするのはある意味で止むを得ないが、何をしても勝てば良いというものではない。
柔道着の色が変わり、審判要領も変わり、何かと複雑なルールの種目となっているが、武士道精神の根底からくる柔道の精神を蔑にし、あまりにもスポーツ化、競技化し過ぎているのではなかろうか?
オリンピック種目といえども、相手に胴衣を掴ませず如何にねじ伏せるかではなく、「さあ、どうぞ」「さあ、来い」といった正々堂々とした試合となってほしいものである。
日本の武士道精神と大英帝国の騎士道精神は相通じるものがあると思う。そのような伝統精神を有する英国が主催するオリンピックであるが故に、現在の柔道の国際競技要領を見直し、講道館柔道の原点に立ち返ったあるべき姿に戻す好機であると思う。
東京オリンピックの開催と講道館柔道の世界普及に身命を賭して尽力された嘉納治五郎師範の教えを引き継ぐ日本柔道連盟に期待する。
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