交戦規定(Rules of Engagement)について
今回は諸外国の軍隊が使用している交戦規定(Rules of Engagement、通常ROEと呼称しています)の考え方等について述べてみたいと思います。
諸外国の交戦規定は、戦闘を開始、もしくは再開する条件、制限を具体的に定めたものでその内容は外交も含め国家の総合的な対応方針に応じて刻々と変化するものであり、事前に全部隊に配布され、政府の対応方針に応じて対応の強度のレベルが変化するダイナミックな規定です。
そもそもROEはベトナム戦争において、シビリアンコントロールの一環として爆撃目標の選定、指定、制限等の目的で誕生したものであり、本来的に軍事行動を政府の戦争(紛争)指導方針に従わせるものであった。
米軍のROEは、国家の当該事態対応方針(既然とした態度で対応、事態がエスカレートしてもやむなし。相手を挑発せず事態収拾を優先等)、軍最高司令官の軍事行動方針(軍事行動、武器の作動等の制限等)が示され、具体的な行動が事前に配布されている細部のリストの指定によってなされる。
そして、そのリストは事態の進展に伴う政府方針の変更によって指定がダイナミックに変更されるものです。
そして米軍に限らず日本以外の軍隊のROEは、基本的には自己防衛(Self Defense)に基づく武器使用、武力行使の行動基準であり、そのSelf Defense は部隊防護(Unit Self Defense)と国家防衛(National Self Defense)からなっています。
部隊防護(Unit Self Defense)は文字どおり部隊を守ることであり、部隊指揮官が平時、有事を問わず自分の部隊、兵士に対する攻撃(意図を含む。)に対しては武器の使用、武力の行使ができます。
国家防衛(National Self Defense)は、国民の生命、財産に対する攻撃に対する防護、つまり国家防衛であり、国外の自国民も対象となります。
攻撃の対象は正規軍でありますが、組織的なテロリストも対象となります。
攻撃の態様は、敵対行為(Hostile Action)と敵対意図(Hostile Intension)からなり、敵対行為(Hostile Action)は実際に射撃を行う、ミサイル、魚雷を発射する等の攻撃行為です。
敵対意図(Hostile Intension)は攻撃の意図であり、攻撃のための準備の開始であり、例えば攻撃のための運動の開始です。
まさにこの敵対意図に対してどのレベルで防御のための攻撃を開始するかが、自己の部隊を防護するために重要となります。
先日、東シナ海での中国海軍の軍艦の海自航空機へミサイルレーダーをロックオンさせたという挑発がありましたが・・・・これはレベルの高い敵対意図(Hostile Intension)です。
米軍であれば、部隊防護のための攻撃開始の権限を与えられた上級指揮官の判断で部隊防護のための攻撃が許されます。
ただし、これもROEの政府方針で示された方針の枠内で指揮官は判断します。
仮に、中国に対しては既然と対応する。事態のエスカレーションも止むを得ないという政府方針であれば、当然攻撃することになります。
この様に、交戦規定(Rules of Engagement)は、政府の対応方針と軍事行動を一体化させるためのツールであり、外交と軍事の両輪を円滑に駆動させる潤滑油でもあると思います。
昨今の日本周辺の軍事情勢を概観しても、自衛隊の効果的な交戦規定(Rules of Engagement)の整備、運用は急務であると思います。
↓ブログランキングに参加しました。良かったらここをクリックしてね!

郷什塾は → ここから訪問できます!
- 関連記事
-
- 中国の一方的防空識別圏に対する日本の航空会社の情けない対応 / 国際常識の欠如 (2013/11/27)
- 日経新聞 池上彰の教養講座「自衛権を巡る解釈新段階」に異論 (2013/10/14)
- 日本海軍の伝統・精神を引き継ぐ海上自衛隊! (2013/10/04)
- 自衛隊とカナダ軍の物品相互協定で合意 日加首脳会談 / アクサ ACSA Acquisition and Cross-Servicing Agreement) (2013/09/25)
- 8月15日は「凛として愛」の心! (2013/08/13)
- 北朝鮮ミサイルに対する破壊措置命令に思う / 平時、グレーゾーンにおける自衛隊行動のあり方 (2012/12/12)
- オスプレイ配備には必要性の検討が不可欠! / 反対運動者は危険性のみ主張! (2012/07/24)
- MV22オスプレイ配備反対の騒動に思う! / 野田総理、森本防衛大臣頑張れ! (2012/07/20)
- イラン危機へ海自の派遣検討 / 政府のホルムズ海峡封鎖の対処案に物申す (2012/02/16)
- 米海兵隊の豪駐留は米軍前方展開戦略の後退か!/96年の台湾危機との相対戦闘力の相異 (2011/11/18)
- 交戦規定(Rules of Engagement)について (2010/11/11)
- 領域警備を誤解しないでもらいたい! (2010/11/09)
スポンサーサイト