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自衛隊観艦式 / 心に響いた野田総理の訓示(全文)


観艦式ロゴ
10月14日に開催された自衛隊観艦式に参加する機会を得た。

私が乗艦した護衛艦「いせ」は訓練展示部隊であり、また当日は天候も良くなく航空機の飛行が大幅に取りやめられたものの全体として極めて円滑にスマートに実施された。

一連の行動を見て、海自艦艇、航空機の練度の高さと状況の変化に柔軟かつ適格に対応できる能力の高さをあらためて再認識した。

今回の観閲官 野田総理の訓示はかっての総理の訓示に共通した国を守る崇高な使命に敬意を表するとか国民の負託に応えて欲しいという一般的な内容に比較し、自衛隊の最高指揮官として部隊や隊員に求めることを具体的に示し、総理自身の覚悟も自ら問い正しておられるのではないかと思われる気迫のこもった訓示であり、海自OBとして胸にこみ上げるものを感じた。

マスコミでは五省とか日本海海戦の一層奮励努力せよを引用して旧海軍への回帰等と今後問題になるのではなどと煽っている記事もあるが、私は今回の訓示は事務方が起案したものを総理自らご自分の言葉と信念で大幅に修正された非常にすばらしい訓示であったと思っている。




ここに私が書き起こした訓示の内容(全文)を紹介する。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    (平成24年度自衛隊観艦式における野田総理の訓示)

昨年の航空観閲式に続き本日の観艦式において観閲官として多くの隊員諸官に直接訓示をする機会を得たことは最高指揮官たる内閣総理大臣として大いなる喜びとするところです。

本艦「くらま」を中心とする艦艇、航空機の雄姿、統率の行き届いた一糸乱れぬ艦隊運動、そして士気旺盛な隊員諸君の規律正しく真剣な眼差し、今日私はこれを目の当たりにしてこの国に自衛隊があることの誇らしさをあらためて心に刻んでいます。

この観艦式が諸君の日頃の訓練の成果を示し、諸君がその胸に秘めた使命感と覚悟を一人でも多くの国民に知っていただく重要な機会となることを信じて止みません。

海洋国家日本の礎である海、我が国最大のフロンティアである海、我が国の海を守るという諸君の職責は日本人の存在の基盤そのものを守ることに他なりません。

今年は海上自衛隊の前身である海上警備隊が発足してから60年という節目を迎えました。
我が国を巡る安全保障環境はかつてなく厳しさを増していることはあらためて諸君に申し上げるまでもありません。

人工衛星と称するミサイルを発射し核開発を行う隣国があります。領土や主権を巡る様々な出来事も生起しています。

この一方で自衛隊の活躍の場面は我が国周辺のみならず世界各地にまで広がるようになりました。我が国の平和と独立を保ち国民の安全を守るという自衛隊創設以来の使命の核心は不変ですが新たな時代を迎えその使命は少しずつ形を変え重要性を増しています。

このような中にあって、本日は諸君に3つのことを求めたいと思います。

まず、諸君に求めたいのは、「部隊の力を磨きあげよ」という事であります。

新たな時代にあって諸君は様々な新しい任務を与えられ、難しい任務を与えられ、厳しい場面に遭遇することも増えると思います。

これを立派に果たしきる力を平素から養ってください。防衛大綱に従って動的防衛力を構築し磨き上げて下さい。いざという時、何が求められるのかそれぞれの部署で徹底的に検証し訓練に励んで下さい。諸君は単に存在することだけで抑止力となるのではありません。鍛え抜かれ磨き抜かれた諸君一人一人の日々の努力があってこそ防衛力が具体的な裏付けをもっていくのであります。

2つ目に諸君に求めたいのは「果敢に行動する勇気」であります。

かってない状況のもとでこれまで経験したことのない局面、プレシャーを感じる場面に向き合うこともあるでしょう。

しかし皆さんは国家の安全を守る最後の拠り所です。国防に想定外という言葉はありません。困難に直面した時にこそ日頃養った力を信じ、冷静沈着に国のために何をするべきかを考えた上で状況に果敢に立ち向かってほしいと思います。

いつの時にでも局面を切り開く力は、最後は諸君一人一人の勇気にかかってくることを忘れないでください。

そして3つ目に諸君に求めたいのは「信頼の絆を広げていくこと」であります。

先の東日本大震災での災害派遣では、全ては被災者の為にという思いで災害対応に当たった10万の隊員の真心が国民に深い感動を与えました。

被災地で自らは数週間缶飯しかとらず炊き出しのご飯や豚汁を被災者に提供し続けた隊員諸君の心は被災者との心の絆を深めたに違いありません。

また、米軍と自衛隊が共同対処したトモダチ作戦の成功は日米同盟に結ばれた日米両国の絆を固く結びつけました。これからの日米の動的防衛協力を深めていく大きな拠り所となっていくことでしょう。

更に諸君の同僚が遠くソマリア沖アデン湾において海上交通の安全確保の任に当たっていることは我が国の海運に携わる人々との絆を強めるとともに世界各国との絆も深め、日本という国全体への信頼を高めてくれています。

そして厳しく危険な任務を遂行するに当たって常に諸君を支えてくれる他国との絆への感謝の気持ちも常に抱き続けて欲しいと願います。

最後に海軍の伝統を伝える五省をあらためて諸君に問いかけます。

至誠(しせい)に悖(もと)る勿(な)かりしか
言行に恥づる勿かりしか
気力に缺(か)くる勿かりしか
努力に憾(うら)み勿かりしか
不精に亘(わた)る勿かりしか

諸君らはこの五省の問いかけを胸に、国を守るという崇高な使命を必ずや果たしてくれると信じます。

常に国民に寄り添って優しき勇者であり続けてくれると信じます。

今こそ国民の高い期待と厚い信頼に応える自衛隊であるために諸君は一層奮励努力されることを切に望み私の訓示とします。

平成24年10月14日 
内閣総理大臣 野田佳彦
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