米海兵隊の豪駐留は米軍前方展開戦略の後退か!/96年の台湾危機との相対戦闘力の相異
1996年の台湾危機時の米海軍の行動は毅然として自信に満ちていた。
1995年11月海上自衛隊演習において、私は海自の戦術単位部隊である第4護衛隊群の首席幕僚(先任参謀)として空母インデペンデンスを旗艦とする米海軍第5空母群と共同部隊を編成して参加した。
当時の海自、米海軍の能力から見たら中国海軍は沿岸警備隊程度の能力であり米海軍は中国海軍をCostal Navy(沿岸海軍)と蔑んでいた。
海上自衛隊演習を終え、広島県呉市に司令部を置く第4護衛隊群と横須賀米海軍基地に司令部を置く第5空母群は両指揮官の緊密な人間関係も手伝い極めて緊密な連携を維持していた。
更に96年の環太平洋共同訓練(RIMPAC96)に再度日米共同部隊(Bilateral Force)を編成して参加することが決定し、96年の5月にグアム沖で会合して米西海岸のサンディエゴに向かう予定としていた。
当年は戦後50周年にも当たり、ミッドウエー沖で日米の英霊に対する日米共同の慰霊祭を執り行う計画も進めるほど親密度は高く、演習以外の国際情勢に関する各種情報に関しても多くを共有していた。
そのような折の96年3月、空母USSインデペンデンスは急遽フィリッピン沖に展開した。台湾危機対応のプレゼンスである。
プレゼンスと言っても抑止のためのプレゼンスというより明らかに武力行使を前提とした展開であった。
米海軍空母部隊の指揮官、艦長たちは自分たちが展開すれば中国は必ず撤退するという確固とした自信を有していた。
そして米空母機動部隊がフィリッピン沖から台湾周辺海域に展開すると中国は台湾の民主化のための総統選を妨害するためのミサイル演習を取りやめ、国際舞台で中華思想としては受け入れがたい屈辱を味わった。
当時、我々は中国海軍が日米の部隊に匹敵する作戦能力を有するには約10年程度かかるだろうという見積もりが日米現場部隊の共通認識であった。
それから約15年経つ現在、中国海軍は空母を就役させ、水上艦、潜水艦のシステム化、近代化を図り、航空機ではステルス機を整備し、昨今の官公庁・防衛産業や監視衛星等に対するサイバー攻撃に見られるようなサイバーサイバー戦/電子戦能力の向上、宇宙開発における宇宙基地建設や衛星攻撃能力の向上等々、予想通りの凄まじい発展を遂げてきた。
最近になり、海上部隊にとってはクリティカルな脅威である、技術的には西側でも不可能だと思われていた対艦弾道ミサイル(ASBM:Anti-Ship Ballistic Missile)の開発と配備に成功したという報道もある。
ASBMの配備をもって総合的な兵力整備の1つの形が整ったのか、中国は米空母機動部隊の展開を阻止するアクセス拒否コンセプトに変更した。
従来は完全に制海権を有する第1列島線のSea Control Areaと海洋の使用を拒否する第2列島線のSea Denial Area というコンセプトからASBMの射程約2000Kmを半径とするAccess Denial Zoneコンセプトに移行した。
この圏内において中国の空母部隊、潜水艦が展開し、空軍及びASBM、更に宇宙基地も含めたサイバー戦部隊が統合され、米空母部隊の進入を阻止するものである。
今回の米海兵隊の豪駐留計画は下図のとおり鳥瞰図的にみると米軍の前方展開戦略の不測事態時の撤退案として明らかである。


米国もここまで中国の脅威を現実のものとして認識し作戦計画の修正を始めたかという驚きが偽らざる心境である。
最近では陸自兵力を南西諸島に展開する等、防衛相も着々と防衛体制の整備を進めているが、自衛隊の従来の兵器、部隊による能力向上のみでなく、初動におけるサイバー攻撃やシステムに対する戦術核でのEMP攻撃等に対応できる能力等も早急に充実、向上させるべきである。
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